マッチング事例紹介

漉き舟の中を自由に泳いだ布たち

伝統の越前和紙にスフ糸(レーヨン)の織物を漉(す)き込んで、和紙の持つ風合いと織物の丈夫さを兼ね備えた「漉き織」を開発しました。

企画・商品名 越前和紙と織物の融合素材「漉き織(すきおり)」
企業名 椿原織物㈱
企業名 ㈱新在家製紙所
企業名 ㈱長田製紙所
企業名 山次製紙所
マッチング内容

・プロフィール

椿原織物(株) 
当社は、紙と布を主としたインテリア関連商品の企画から製造、販売までをトータルに行うインテリアのスペシャリスト集団として急成長を遂げています。また、超高速無人化工場の設やTQC(全社的品質管理)を導入。高品質、高デザインを主としたトータルインテリアメーカーをめざしています。

(株)新在家製紙所
繊維を織り込んだ模様や凹凸で表現した模様、色・デザイン・柄、様々なものがございます。
常に新しい商品開発に取組み和紙の持つ美しさを追求してまいります。

(株)長田製紙所
先代・先々代から伝えられた様々な手漉き技術を活かして、主力商品である襖紙の製作から、近年は和紙を使った様々なオリジナル商品や特注のアート作品等の製作を通じ、新しい和紙の可能性を追及しています。

山次製紙所
永年受け継がれてきた技法を守りながら、革新の技術を活かし、さらにすぐれた和紙を生産してまいります。

 

 

・連携の経緯、工夫と苦労

当社(椿原織物㈱)は元々、襖用の紙に貼り合わせる芯地の布を織る機屋です。襖の需要が減り続ける中、自社で企画・製造・販売する道を探っておりました。

私たちはまず、襖紙や壁紙を得意とする㈱新在家製紙所さんと協力して新商品の試作開発に取り組み、今までのように貼り合わせるのではなく、紙の中に布地をいっしょに漉きこんで「新しい紙」を作り上げました。
機械漉きらしくキッチリとした布目を残して、その上に藁や紙の原料を混ぜ込み、凸凹のある「漉き織」として仕上げました。

「漉き織」を東京の展示会で発表したところ、
「面白そうなので私にもやらせてください」と同じ福井で越前和紙を漉く㈱長田製紙所さんから思いもかけないお声かけをいただきました。
長田さんは、「漉き織に手漉き感を出すことが出来ないだろうか」と考えました。
そして出来上がった「漉き織」は全くタイプの違ったものになりました。
透明な薄い布に紙の原料が泳ぐように自由な形でからんでいる、まるで宇宙空間に浮かんでいるような不思議な「漉き織」が出来ました。

また、協力をお願いした山次製紙所さんでは、ちょうど手漉きでエンドレスな紙を漉く研究を進めていて、新しい機械を開発したばかりでした。
伝統の落水と漉き合わせの技法で、独自の機械を使い、長い長い反物のような「漉き織」を完成させました。

3社はそれぞれの得意な技法で3様の「漉き織」を完成させたのです。

翌2005年、「漉き織」は日本インテリア協会主催の国際展示会 <IPEC21>にて奨励賞をいただきました。

 

「漉き織」にはまだ決まった使い方、「漉き織で作った商品のかたち」というものがありません。様々な用途・分野に応じ幅広く活用していただけることを願っております。